働くことがイヤな人がこの先生き残るには
『働くことがイヤな人のための本』読んだ。
感想
哲学博士が書いた「働け!」でもなく「遊べ!」でもない本。
- 留年を繰り返して希望の見えない法学部生
- 会社に入って人生に面白みを感じられない女性
- 仕事に生きがいを感じないが他に何も決断できない中年男性
- 哲学が好きだったが両親に反対され家業を継いだ男性
が仕事やお金、人間関係などを作者に哲学的相談をする内容。
世の中どうにかなるよ的なことを言うわけでもなく、お前ら大人になれよ的なことを言うわけでもない。
「お前らが人生かけて夢を追っても良くて二流止まりだ」的なこととか「世の中は理不尽だ。理不尽に対してはどうすることもできない」的なこととか現実を教えてくれる。
最初は相談者の4人に感情移入していたが、相談ではなく心理カウンセリングのようにも感じてくる。だんだんと自分が精神的な病気なのではないかという印象を持ってしまう。本を読み進めるうち、無意識的に働くことに意味を見出しているということかも。
面白い。
メモ
彼ら(引きこもっている者)はひと一倍まじめなので、つまり健全な社会的承認を求めているので、社会から外れていきることを求めてはいない。(中略)彼らは「他人に認められたい」という欲求を捨てることはできない。いや、その欲求が過剰に強い人間である。しかし、だからこそ社会に出ることが恐ろしくてたまらない。その容赦のない評価に足がすくむのである。(中略)そこで、プライドを維持するために、彼らは「不戦敗」という道を選ぶ。戦わないことにするのである。戦うと負けるかもしれないが、戦い自体を拒否してしまえば、致命傷は負わなくてすむ。
p.17-18
キング牧師のように黒人解放のために命を懸けたい、マザーテレサのように「死の家」を築きあげたい、神谷美恵子のようにハンセン病に一生を捧げたい、曾野綾子のように障害者とエルサレムへの巡礼の旅を企画したいと思っても、実現するのはなかなか難しい。なぜなら、多くの人にはその気力も能力の資力も人脈も、そして運すらないからだ。
p.48
カミュが愛用していたニーチェの言葉がある。それは「私を殺さないかぎり、私はますます強くなる」というものだ。
That which does not kill us makes us stronger.
p.61
- 作者: 中島義道
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/02/02
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (8件) を見る