論理的思考をするには英語的思考をする必要がある
日本人は論理的思考が苦手である。
それは日本の本音と建前の文化が原因である。
有名な話であるが、日本人が会話をスムーズにするための「すみません」はアメリカ人には自分の非を認めることであるし、謙遜で使う「つまらないものですが」は、不良品なものだととられてしまう。
そのような日本人的コミュニケーションを『高校生のための論理思考トレーニング』では "前論理的" と表現している。
前論理的コミュニケーションこそが論理的思考を苦手としている原因である。
論証責任
論証責任(理由を説明しなければならない責任)の条件は以下の3つである。
- 相対的な形容詞
- 助動詞
- 主観を表す動詞
相対的な形容詞
相対的とは、時間や文化、価値観によって基準が変わるということである。
「WindowsよりMacが優れている」や「今年は去年よりも暖かい」、「彼は男性的である」などである。
どこが優れているのか、どのように暖かいのか、どのようになぜ男性的なのか。
パプアニューギニアのある部族では、『高くジャンプすること』が『男性的』である。
日本人女性に「男性的とはどのようなことですか」と尋ねて「高くジャンプすること」と答える人は、私はテレビやネットのアンケート調査で見たことはないので非常に少数派だと思う。
助動詞
can,may,must などには、主観が入るため論証責任が生じる。
なぜ可能なのか、なぜそうかも知れないのか、なぜしなければならないのか。
主観
think,believe,want なども同様に主観的であるため論証責任が生じる。
ただし、以下の2つの条件の場合、論証責任は生じない。
- 現在形でない
- 骨格に論証責任がない。
現在形でない
「10年前はWindowsよりMacが優れていた」、「去年は一昨年よりも暖かった」等は論証責任が生じない。
ディベートでは現在形で述べる必要があるため「だから何が言いたいのか、現在はどうなのか」と言われておしまいである。
骨格に論証責任がない
「これは美味しいコーヒーですね」は論証責任がある(どのように美味しいのか)が、
「私はこのコーヒーが美味しいと気づいた」ならば論証責任はない。
"気づく" が主観でなく事実を表すからである。
ロジックの基本(三角ロジック)
- クレーム (論証責任)
- データ (事実)
- ワラント (データを挙げる根拠)
クレームに対しデータを出し、そのつながりとしてワラントを出す。
例として、「彼はルックスが優れていると思う」の場合は
「彼はルックスが優れている」がクレーム
「彼は木村拓哉に似ている」がデータ
「木村拓哉はルックスが優れている」がワラント
議論が高度な場合、クレームとデータを結びつけることが難しくなりワラントが重要になる。
交渉では、相手が同意するワラントを出すことが有効である。
建設的批判
ディベートで相手へ反対する場合は、建設的批判を行う。
以下の3つのどれかを行う
- 反駁
- 質疑
- 反論
反駁(はんばく)
データまたはワラントの虚偽、矛盾をつく。
ゲームの逆転裁判で言う所の「異議あり!」である。
質疑
データかワラントに論証責任を求める。
逆転裁判では「待った!」に近いものである。
反論(カウンターアーギュメント)
相手の三角ロジックを認めた上で、新たな三角ロジックを立てることである。
クレーム:彼はルックスが優れている
データ:彼は木村拓哉に似ている
ワラント:木村拓哉はルックスが優れている
に反駁、質疑、反論で批判を行う。
反駁(データ):彼は木村拓哉に似てない
反駁(ワラント):木村拓哉はルックスが優れていない
ただし、「なぜ似ていないとのか」「なぜ木村拓哉はルックスが優れていないのか」の質疑を受ける。
質疑(データ):どのように、なぜ似ているのか
質疑(ワラント):どのように、なぜ木村拓哉はルックスが優れいるのか
反論(クレーム):そうかも知れないが、彼がルックスがよくありません
反論(ワラント):没個性的の方がルックスがいいと思います。
感想
高校生のための論理思考トレーニングを読んだが、
論理思考トレーニング的な内容は少なく、むしろ英語と日本語の違いや文化的な違い、雑学的な部分が多かった。
これは、ディベートに使うテクニックを学ぶための本ではなく、論理的思考の背景を知るための本という位置づけで読んだ方が良い。
- 作者: 横山雅彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
- 購入: 12人 クリック: 124回
- この商品を含むブログ (56件) を見る